残り香の告白
厳格な家を飛び出してハリウッドで人気脚本家となったマライアは、愛する姉ローラと和解するため10年ぶりにウィスキーリバーへ帰郷した。
だが、そこでマライアを待っていたのは射殺されたローラの遺体と自分への嫌疑、そして憎しみに満ちた家族が一堂に会する姉の葬儀だった。
マライアは保安官トレイスに掛け合い、自分も捜査に加わらせてほしいと頼む。
ローラを殺した人でなしが監獄に入るのを見届けて初めて、私は泣くことが許されるのだ……。
マライアはトレイスがどれほど拒もうと、彼と行動をともにすると固く心に誓った。
面倒なことになりそう。
マキシはその男性を見たとたん、そう思った。
黒髪に金茶色の瞳、キスをせずにはいられない官能的な唇。
大柄でたくましくて、いかにもわたし好みだ。
でも今は保釈中の身、恋愛などもってのほかだわ。
無実が証明されるまで、息を潜めて生活しなければならない。
うまく逃げおおせたと思ったのも束の間、かちり――彼に手錠をかけられてしまった。
マキシはパニックに陥った。
なんとかして逃げなくちゃ！ 相手は男性……女の武器を使うという手もあるわ。
突然の悲報に、ケイトは打ちひしがれた。
幼いころからの親友とその夫が事故死したのだ。
夫妻の弁護士に呼ばれたケイトは、そこで別居中の夫ジャレドに再会した。
それぞれに家庭より仕事を優先させた結果、離婚は時間の問題になっていた。
ところが公開された遺言は、そんな状況を大きく変えるものだった。
親友夫婦は、遺された娘キャシディの共同保護者として、ケイトとジャレドを指名していたのだ。
二人が結婚を継続しているという条件つきで。
ロンドンで人気のレストラン〈ベラ・ルチア〉は中東進出を決めている。
出店計画を進める義兄マックスの手助けのため、メリッサは真冬のロンドンから中東にある灼熱の国ク・アリムへ飛んだ。
空港ではこの国のシーク、スリム・アル・タニが出迎えてくれた。
エキゾチックな容貌と謎めいた雰囲気、堂々とした風格――メリッサはたちまちこの男性に魅了された。
とはいえスリムは一国の指導者であり、考え方も異にする。
だからメリッサは夢にも思っていなかった。
仕事を終えてロンドンへ帰ろうという前日の夜、自分の客としてク・アリムに残ってほしいとスリムが言いだすなんて。
十年前、マリアンはセブと出会い、運命の恋人と確信した。
しかし彼はある日突然、行き先も告げないまま姿を消す。
その後、マリアンは彼の素性を知った。
プリンス・セバスチャン二世――アンドヴァリア公国の君主。
王族と平民、結ばれるべくもない二人だったのだ。
月日は流れ、歴史学者となったマリアンは、王室の招きでアンドヴァリアに滞在することになった。
セブと再会し、マリアンの心は乱れた。
彼への思いは消えていないどころか、つのるばかりで、しかもマリアンは、セブには言えない秘密を抱えていた……。
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